経済成長と景気振興は相反する

19世紀の終わり頃の日本では、20万台の人力車が営業していたそうです(それに見合う人が人力車を引いていたことになります)。しかし、昭和に入り、自動車に取って代わられて姿を消していきます。当然、人力車を引いていた人たちは失業したのですね。ここで、政府が取りうる政策は、3つです。

1 人力車産業の衰退による失業者が、新たな成長産業に転職できるように支援をする。
2 何もしない
3 失業が発生しないように、人力車産業に補助金を垂れ流し続ける。

普通に考えて、ベストは1番です。もし、当時の政府が、(人力車産業に限らず)あらゆる衰退産業に3番の政策を取り続けていれば、今頃、恐ろしい財政赤字に苦しみ、かつ、世の中の進歩は妨げられていたことでしょう。
経済成長とは成長産業が衰退産業を駆逐することですから必ず痛みを伴います。一方、景気振興とは、痛みを和らげることです。そもそも、相反する部分があるのです。

テレビで経済討論番組を観ていると、話が噛み合っていないことがよくあります。一番多いのが、経済成長と景気回復を混同していることです。そこで、私なりにちょっと、この関係を整理してみます。

いいでしょうか。例え話です。

経済成長のモデルとして、よく説明に出されるのですが、離れ小島に12人の住人が住んでいるとします。この12人は自給自足で農業をしています。生産性は悪く、1人が働いて、1人分の農作物しか採れません。よって、全員が農業に従事しています。農業以外のことをする余裕はどこにもありません。
やがて、住人の農業スキルが向上したとします。1人につき、2人分の農作物が採れるようになりました。つまり、住人全員12人分の食料を生産するには、6人で足ります。あとの6人は、農業に従事する必要がなくなります。失業です。
しかし、失業した6人が別の仕事を始めました。農機具の制作とか、肥料づくりとか、治水土木工事とか。一方、農業に留まった6人の懐具合を見ると、1人につき2人分の食料を生産していますので、1人分の食料が過剰です。よって、その過剰分を換金して、農機具、肥料、等を購入します。
こうして、さらに農業生産性がよくなり、1人につき3人分の食料が生産できるようになりました。すると、農民が3人いれば全員の食料をまかなえることとなり、さらに農民6人のうち3人が失業です。そこで、その3人は、娯楽産業などサービス業を始めました。今では農民3人が、全島民12人の食料を生産し、他の9人が物づくりやサービス業に従事しています。

このようにして、生産性がどんどん良くなると、農業従事人口は減っていき、一時的に失業が発生し、新しい産業が興り、そして、全員が物質的に豊かになります。

以上が、供給サイドから見た経済ですが、ここでわかることは、経済が成長するとは、生産性が向上することであり、一時的に勝ち組と負け組に分かれて失業が発生するものの、最終的には全体の豊かさが増すということです。繰り返しますが、成長には必ず痛みが伴うのです。

タイムラグがありますので、あまりにも痛みがひどいと、待っていられないこともあります。そうしたときには、需要を拡大する景気刺激策が必要になることもあります。しかし、需要創出を自己目的化したやりかたは、栄養増強剤を飲んで一時的に元気になるようなもので、根本的な問題解決にはなりません。

現実の世界に置き換えて考えてみると、小泉・竹中路線は、すべて正しかったとは思いませんが、おおまかにいって経済成長路線を辿っていました。しかし、民主党菅政権は、この経済成長路線を否定しています。その結果、希望もないままに痛みが大きくなっていっています。考え方が間違っているのですから、頑張れば頑張るほど、悪くなります

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