尾崎豊世代から、でんぱ組.inc

最近の若者は尾崎豊に共感できないらしい、と、よく聞きますが、それは世代ギャップの問題ではないと思います。時代ギャップです。私は、尾崎豊世代ですが、ノスタルジーを感じることはあっても、いまではやっぱり共感できない(笑)。それは、大人、責任世代になったからとかそういうことではありません。たとえ、今の時代にティーンエイジャーだったとしてもです。

尾崎豊が若者の心を捉えた時代、それは、ジャパン・アズ・ナンバーワンとか言われて、バブルへまっしぐらの時代です。大人(社会)はがっしりとしていて、反抗しがいがありました。けれど、バブル崩壊から20年のデフレ時代を経て、社会に反抗してみても、甘えているだけにしか見えません。そういう社会状況ではありません。年金とか、自分の世代で考えないと誰も考えてくれません。自分で答を出さなきゃいけないのです。

尾崎は、甘えて拗ねているときはよかったけど、自分が、そのおとなになった時に歌う歌がなくなってしまいました。

尾崎以降の流行歌は、社会と関わることはやめてしまいました。内向きを象徴する歌が、SMAPの「世界に1つだけの花」のような気がします。

ところが、

おっしゃ レッツ!世界征服(インベーダーインベーダー)

の、きゃりーぱみゅぱみゅとか、

華麗なステップで、世界中駆け巡れ(行くぜ!怪盗少女)

災いさえ地球(ほし)の教え だけど
僕たちはもう 意識を浄め
手と手をつなぎ 生きてゆける(Neo STARGATE)

と歌う、ももクロだったり

おそらく、涼宮ハルヒなんかの影響とおもいますが、「少女が世界を変える」みたいなセカイ系の流れがぐんぐん来ているように感じます。大人が社会を変えてくれ、ではなく、私が変える、と歌っています。

私の世代では、自作ミュージシャンが偉いという感覚をまだ持っている人が多くて、「アイドルなんか、商業主義=歌わされているだけ」みたいなことをまだ言っていたりします。アイドル全盛の昨今の状況を嘆かわしいというように。でも、なぜ、アイドルに素敵な楽曲が集まるのか、それはアイドルに願いを託す人がいるからでしょう?昔のアイドルは、基本、恋の歌しか歌わなかったよね。

ともあれ、その象徴だと思うのが、でんぱ組.inc!。

ももクロが健康的でカワイイのに比べて、でんぱ組.inc!は不健康なところが魅力という対照的なアイドルです。でんぱ組.inc!は、インタビューの中で、「スクールカースト」という言葉をよく使っていますが、スクールカースト上位にいる女の子を集めたのがももクロで、下位の女の子(というか年齢層はもっと上だけど)を集めたのが、でんぱ組.inc!というイメージかと思います。でも、世界観が似ている。

話は少しそれますが、「桐島、部活やめるってよ」は、高校内の微妙な関係をもとにした今を代表する青春小説(映画)ですが、スクールカースト上位の女の子を演じたのが橋本愛(あまちゃんのユイちゃん役)や、松岡茉優(あまちゃんのGMTリーダー入間しおり役)。NHK朝ドラ「あまちゃん」に、そういうイメージを引きずってアイドルになるべく歩んできた彼女らと対照的に登場するのが、東京時代はスクールカースト下位にくすんでいたアキちゃん。昔ドラマだったら、ユイちゃんは悪役お嬢様です、おそらく。

さて、でんぱ組.inc!の魅力はなんといっても、本物のアキバ系だということです。例えば、メンバーの一人、最上もがについては、

最上さんは、「ネットゲームがスゴく好きで、小さい頃から8年間くらいネトゲをしていて。外に出るのが嫌いで、典型的な”ネトゲ廃人”だった」

と、当時を振り返る。しかし「これでは食べていけない」と外に出はじめ、「でんぱ組.inc」をプロデュースする株式会社モエ・ジャパンの社長・もふくちゃんさんが関わる記者発表をアルバイトとして手伝ったことがきっかけで、アイドルとしての道が開ける。

最上さんをスカウトしたもふくちゃんさんは、最上さんとの初対面の印象を次のように語った。

「(アルバイトのなかで)金髪のショートカットであまりにも目立っていて、むしろ『でんぱ組より可愛い子がいるぞ』みたいな(笑)。関係者もみんな食いついて、受付で二度見するんですよ。翌日、いろんな業界の人から『昨日受付やってた子、誰?』とメールが殺到して。『これはいける』と思い、速攻でナンパしたんです」 このときも最上さんへは、もふくちゃんからツイッターで連絡があったという。

「引きこもりのネトゲ廃人」からアイドルに でんぱ組.incの最上もが

という感じで。

ももクロの楽曲を多く手がけている前山田健一氏が、その世界観をでんぱ組.inc!に注入したのが、

いじめられ 部屋にひきこもっていた
ゲーセンだけが 私の居場所だった

で始まるメンバーの自伝的な歌「W.W.D」です。これは創作の部分も多いだろうということなかれ、前山田健一氏によると、実際のことは「暗すぎてかけない」

梨紗 「歌詞カードの最後に、“これは実話をもとに構成されています”って書いてあるんですけど、そうじゃなかったらすごく嫌みな歌になると思うんです」
瑛美 「私、不幸自慢はイヤなんです。そうじゃなく、みんなほんとに実話なんで。ただドラマチックにするためのストーリーだったら自分で歌うのは無理ですね」
梨紗 「私も、個人的にそういうのが一番嫌いで」
未鈴 「オタクのあるあるですよ、ニワカが大嫌いっていう(笑)。全員、そういうのをやっちゃダメだって分かってるからこそ、できた曲かなと思いますね」

「この歌詞が来たときに腹をくくりました。“生きていくためにはここで歌わなきゃダメなんだ”」──でんぱ組.incインタビュー – CDJournal CDJ PUSH

多分、「イマドキの奴らは冷めている」と評する人への回答になっていると思います。

地の底でうごめいてたんだ
どん底も経験してんだ
夢を見たっていいじゃん
見返してやるし
我らの名前は
でんぱ組.inc!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

せまいステージから 世界をめざせ
伝えよう ビリビリのでんぱ
どこまでも行ける 捨てるものなんかない
マイナスからのスタート 舐めんな!

尾崎豊ファンには申し訳ないけど(私もファンでした)、今の時代は、大人に甘えたって助けてくれない、自分で道を作るしかない、それが「冷めている」という印象になるんだと思います。多分、問題意識は、尾崎、つまり私達の世代のほうがずっと高い…でも、それと、社会での立ち位置や向き合う姿勢とは、また違ったものなのかなと思います。

ところで、

さて、これに続く第2弾が、「W.W.D Ⅱ」です。これはどうかな…?

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