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サリム氏のインタビューより

今年10月に名古屋で、生物多様性条約第10回締結国会議が開かれます。そのこともあって、最近、そのあたりの記事も増えてきましたが、今日の日経新聞朝刊で、インドネシア大統領検討会議サリム氏のインタビュー「生態系保全と経済どう両立」が載せられていました。サリム氏は、環境分野で国際的にも著名なリーダーとのことです。

――地球上で1400万種と推計される生物の多様性はなぜ重要なのでしょう。

「自然は生物の相互依存で成り立っており、その基本になるのが生物多様性だ。生物が多様なほど生態系は安定する。20世紀には経済効率を中心とした開発が進み、生物多様性を無視した工業生産が続いた。しかし、環境破壊は人類の生存を脅かす水準にまで至ってきた」

そのとおりですね。

――環境保護を重視すれば、経済発展が進まないとの意見は根強いです。

「インドネシアは従来、森林を伐採して木材のまま輸出してきたが、経済発展のためには改めねばならない。樹皮や木の実を効率的に利用することを考えればよい。インドネシアで育つマツの一種からはがん患者用の薬や化粧品、食品などの原料がとれる」

「インドネシアの森林地帯に数多く生息するヒルは、分泌液に人間の血液をさらさらにする効果があり、脳卒中や心臓発作の薬に使える成分を含んでいる。森林を伐採せずにヒルを保護すれば、より高い価値を生み出す。深海に住むサメの肝油からは肌にはりを与える効果があるとされ、化粧品の原料になるスクアレンという物質もとれる」

これは面白い話です。

――生物多様性と経済発展を両立させる手段はあるのですね。

「カギを握るのが、天然資源に付加価値をつける科学技術だ。サメの肝油は高い技術で(有用な成分を抽出すれば)価格が100倍にもなる。現在は(貧しい人たちが収入増のため)自然を傷付けて木材やサメの肝油を大量に輸出しているが、技術を使って効率的に価値を高める開発手法へと変えれば、環境破壊を抑えることができる」

まったく、そのとおりだと思います。

確かに、「経済成長」と「環境保護」が相反するという考えは、完全に間違っています。下記の図は、この20年間の地域別森林の増減です。先進国よりも発展途上国の方が、環境破壊が進んでいることは、明らかです。

技術革新が進めば資源を以前より有効に活用することができるようになります。当然、資源浪費が少なくなり、環境に優しくなります。技術革新には、経済成長は欠かせません。「経済成長」は「環境保護」を後押しするのです。

また、経済成長を止めて昔に戻れば環境に優しい、などという考えは非現実的で、実現不可能です。

もちろん、「浪費」は「環境破壊」につながります。「経済成長」イコール「環境に優しくない」という考え方は、「浪費」であってもよい論、「消費」即「経済成長」といった需要サイドの経済学者の悪しき影響だと思います。供給サイドからみれば、「浪費」は資源の非効率活用であり悪です。

――その実現には何が必要ですか。

「先進国から途上国への技術移転が欠かせない。故大来佐武郎博士(元外相)らが広めた『雁行(がんこう)型経済発展論』では、日本が発展の先頭に立ち、アジア諸国が協力しながら地域全体が経済発展していく。域内各国が相互に依存する関係が重要だという考え方だ」

「日本は技術を囲い込むのではなく、(環境分野でも)技術移転を進めてアジア全体の発展を後押しすべきだ。(略)」

――企業が生物多様性の保全や利用で果たす役割をどう考えますか。

「企業は途上国から木材を輸入するだけでなく、技術革新によって葉や樹皮などの利用法を考え、付加価値を探ればよい。」

はい。そのとおりですが、

「途上国に技術移転すれば国際競争に敗れると考えるのはおかしい。日本には非常に高度な研究施設があり、環境技術の水準も高い。ソニーの携帯オーディオプレーヤー『ウォークマン』で分かるように、日本は技術を進化させる十分な力を持っている」

おやおや、このあたりから話がおかしくなってきたような気がします。途上国のリーダーはいつも、こういう論なのですが。

環境破壊とは、長期的視点からの資源の非効率活用の問題です。企業は経済的合理性に基づいて行動しています。経済的合理性からすれば、資源の有効活用は必須です(まあ、企業は、短期の結果を求めるという欠点はありますが)

企業は何も、国に縛り付けられているわけではありません。日本国が、企業に対して「日本を出て行き、別の国で活動をしなさい」と命令できるはずもありません。これは、企業というより、社会とか国の問題だと思います。

受け入れる側の発展途上国の社会や国の仕組みが変わらなければ、何のよい結果も生まないと思います。仮に、強制的に技術移転だけ発展途上国におこなっても、うまく機能するとはとても思えません。会議で正義を訴える前に、まず、なぜ企業が来てくれないのか。企業が来てくれるのにはどうすればいいのか。を考えるべきではないでしょうか。

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